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東京高等裁判所 平成9年(ネ)2549号 判決 1998年3月04日

控訴人

株式会社現代美術社

右代表者代表取締役

甲野圭

控訴人

甲野圭

甲野世津子

甲野理子

松木寛子

控訴人ら訴訟代理人弁護士

西田公一

長谷川健

勝浦辰博

被控訴人

安田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

有吉孝一

右訴訟代理人弁護士

野村弘

被控訴人

大同生命保険相互会社

右代表者代表取締役

河原四郎

右訴訟代理人弁護士

平山三徹

被控訴人

エイアイユーインシュアランスカンパニー

(エイアイユー保険会社)

日本における代表者

吉村文吾

右訴訟代理人弁護士

服部邦彦

花﨑浜子

被控訴人

大東京火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

小坂伊左夫

右訴訟代理人弁護士

島林樹

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

一  控訴人らは、原判決取消しとともに原判決四頁末行以下の「第一 請求」に記載の給付命令の判決を求め、被控訴人らは控訴棄却の判決を求めた。

二  事案の概要は、原判決六頁六行目以下の「第二 事案の概要」に示されているとおりである。

三  当裁判所も控訴人らの本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり改めるほか、原判決三三頁末行以下の「第三 争点に対する判断」に示されているとおりである(ただし、二九頁二行目の「人間ドッグ」を「人間ドック」に改める。)。

1  三八頁一行目の「十分に」を削る。

2  四〇頁九行目の「実際には」から末行末尾までを「実質上の累積損失を前払費用として資産に計上したり、借入金を過少計上したりして(文部省に提出した決算書類では、売上高と制作費の水増しがある。)、」に改め、四一頁三行目の「達し」の次に「(控訴会社作成の貸借対照表上は約四憶九〇〇〇万円)」を、同頁九行目の「二二、」の次に「五〇ないし五三」、をそれぞれ加え、同頁一〇行目の「の損益」から四二頁四行目の「すれば」までを「決算上、前払費用の計上が異常なものであり、借入金の過少計上が認められることは前認定のとおりであり」に改める。

3  四五頁五行目の「ものであった」を「ことになると一郎が認識していたことが推認される」に、同九行目の「ついても」から一〇行目末尾までを「ついては、日販の連帯保証を外す必要が生じることから、いったんは右借入金を弁済するなどの措置をとらなければならないという状況にあった。」にそれぞれ改める。

4  四七頁四行目の「迫られていたが」の次に「(右長銀に対する借入金は日販が保証していたものであったことは、前判示のとおりである。)」を加える。

5  五四頁五行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「自殺かそれ以外の事故かが争われる場合において、遺書や目撃者等の直接証拠が存在しないときには、自殺の動機の存否及び事故の態様等の状況証拠によって判断するほかない。」

6  五六頁八行目の「である」の次に次のとおり加える。

「(控訴人らは、これを通常の商取引と主張するかのようであるが、そうであるならば、日販に秘してこのような取引先の変更をすべきものではないし、前受金の四二〇〇万円の支払についても確固たる目処をつけた上で処理すべきものである。)」

7  六〇頁三行目の「推測できる。」の次に「日販は、他の取次会社に比して代金の取立てが厳しくない方であったことから、『情の日販』と特色づけられていた(甲三二)。一郎もこのことを認識していたものと推認されるが、そうであればなおさら、取引先をトーハンに変更しようとしたことは一郎にとって強い自責の念を抱かせたものであり、精神的な重みとなっていたことが十分に認められる。」を加える。

8  六四頁二行目の「相当する」の次に「(控訴人らは、右の高さは108.3センチメートルであると主張し、甲四九にはその旨の記載がある。原審検証の際には右高さは一一〇センチメートルと計測されているが、計測位置ないし方法によっては若干の誤差があることも考えられ、甲四九の計測結果もあながち否定できない。しかしながら、右の程度の誤差は以下の認定に影響を及ぼすものではない。)」を、八行目の「起こし」の次に「あるいは手すりにもたれかけた手が滑るなどして、」をそれぞれ加え、末行の「とどまるから」を「とどまるし、手が滑った態様であったとしても、伸び上がり勢いをつけて手すりに向かって行ったという故意によるとしか考えられない態様でない限り、身体の重心より高い位置にある手すりを超えることは到底考えられない。結局、いかなる態様であれ、故意による以外に」に改める。

9  六八頁八行目末尾に続けて「その他、故意による以外に、手すりの欠陥があったことなど一郎が本件踊り場から転落した原因ないし態様をうかがわせる証拠はない。」

10  六九頁一行目の「ない。」の次に「さらに、本件各保険契約が本件事故の直前に締結された不自然なものである等、契約締結と本件事故の時間的関連等からみて、保険金取得目的の下の自殺を疑うべき事情は見当たらない(甲五五ないし六〇)。」を、三行目の「戊七、九」の次に「。したがって、確実に保険金が支払われる態様での死亡、例えば交通事故を装うことなどを考える暇もなく、自殺に至る者も相当ある。」をそれぞれ加える。

四  本件控訴は理由がない。

(裁判長裁判官 稲葉威雄 裁判官 大藤敏 裁判官 塩月秀平)

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